いてふの実

朝の散歩が習慣になってきた。今の季節は本当にいちょうの木が美しい。青空に映える黄色。すくっとした立ち姿。

 宮沢賢治の「いてふの実」という童話が浮かんでくる。書き出しはこうだ。『そらのてっぺんなんか冷たくてまるでカチカチの灼きをかけた鋼です。そして星がいっぱいです。いちょうの実が旅立つ朝なのです。「ね、あたしどんなところに行くのかしら?」「僕はきっと金色のお星さまになるんだよ」』・・・

いちょうの子供たちの会話が続く。旅立つ不安や冒険に向かうわくわくした気持ち、一つ一つの会話がなんて生き生きしているのだろう。

『おっかさんの木はまるで死んだようになってじっと立っています。子供らはまるで飛び上がるくらい輝きました。北から氷のように冷たい風がゴーッと吹いてきました。「さよならおっかさん」「さよならおっかさん」子供らはみんな一度に雨のように枝から飛び降りました。北風が笑って、「今年もこれでまづさよならさよならっていうわけだ」』・・・

 本当にきれいなお話です。そんなお話を思い出しながら歩くのはとてもしあわせです。そういえば小学校の校庭に大きな大きな銀杏の木があって、友達数人で手をつないで幹のまわりを囲んだり、葉っぱを散らしたりして遊んだなあ。なぜかいちょうの木はいろいろなことを思い出させてくれるような気がします。

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