人口知能(AI)が話題になっている.かなり専門的な問いでも答えてくれる.プログラムも書いてくれるらしい.かなりの精度で.こりゃ大変だ.知的な職業もAIに奪われるかもしれない.いやいや,人の心に共感を必要とする,例えば心理カウンセラーの仕事は,生き残るのだろう.
いや,待てよ,10年ほど前,眠られない深夜に何気なく見たTVで,外国人のカップルがカウンセリングを受ける番組があった.男女(あるいは同性)の2人が,カウンセリングルームにやってくる.ルームには,小さなロボットが一台(一人?)テーブルの上に乗っかっている(この表現が相応しい).二人は顔を見合わせて,不思議そうに,戸惑いながら,照れ笑いをしてロボットに向かい合ってソファに座る.ロボットはおもむろに「お二人の関係は?」「本日はどのようなことを・・・」などと,話題を振る.
あまりの奇妙さに目が覚めてしまい,最後まで番組を見てしまった.1時間ほどだったと思う.ロボットはカップルの相談に「感情を交えず」「的確に(と感じるが)」「回答」する.それがあまりに見事だった.
相談相手は「同性愛のカップル」,「LGBTの悩みを抱える男性」「結婚の倦怠期を迎えた中年男女」「悩みを抱えた中学生」などが入れ替わり立ち替わりロボットに相談する.
「人と共感する」こと,「カウンセリング」の意味を根本的にまさに問い直す番組だった.詳しく内容は覚えていないが,ロボットであることの「きやすさ」「無機質とも違う論理性」がとても心を和ませてくれるのだ.感情が昂り,お互いに感情をぶつけ合っているカップルや,自己同一性に悩む悪循環に論理的な回答を得ることで,相手がロボットだけに腹も立たず,素直に納得していく相談者たち.
脳研究者の池上裕二氏が,
カウンセリングを「心を通わせ合うためヒトならではの仕事で、冷徹で機械的なAIに心のケアなどできるはずがない」との考えは時代錯誤だ。今ではAIによるうつ病などの精神疾患の患者対応は珍しくない。実際、AIカウンセリングの治療効果は高く、患者からも「人には話しにくい内容でも打ち明けられる」と好評だ。米国のアンケート調査によれば、AIカウンセリングで治癒した患者の7割以上が「今後もAIに対応してもらいたい」と回答した。[週間エコノミスト(2022-2023)の闘論席(2023年5月16日号 第101巻 第18号 通巻4793号]
と述べている.まさしく.
一体,人間の価値はどこにあるのか,AIに問うてみよう.
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