ご存じ何かと有名な上野千鶴子さんの新作。
何気なく手に取ったこの本は髙口光子さんは介護の分野では有名な方だからだ。しかもその方が
「私、クビになりました」という。これは一体どういうこと?と驚きながら読み進めました。
私が髙口光子さんを知ったのは30年程前に当時「生活リハビリ」を提唱していた三好春樹さんたちのお仲間だったからです。生き生きジャーナルという介護雑誌の中で、髙口さんは老人病院のPTとして「不幸比べ」というやや危険なレクレーションを発表していました。
それはお年寄りが「私のほうが手が動かないから不幸だ。」「いや私は歩けない」「いや私は家族がいない」と自分の不幸を口に出す。それを白板に正の字で書くお年寄りがいて、みんなでワイワイ、こっちの勝ち!などと言い合うゲームでした。自分の不幸を人に話して競い合うことで、開き直りたくましく生きる。う~ん。
病院では訓練というより、お年寄りも職員もレクリエーションや行事を楽しむことが大切。お年寄りは「患者」や「病人」ではなく「病院が生活の場になる人」でいいのではないか?というのが高口さんの主張でした。それが病院に生活を持ち込まれることが理解できない看護師からの猛反発を受ける。
当時はそうでしたね~。今もそうかも・・・
その後髙口光子さんは「生活リハビリ」に共感する特別養護老人ホームから誘いを受け、介護福祉士の資格やケアマネージャーの資格を取り、「良い介護」とはどういうものかを現場で実践し指導してきたそうです。特別養護老人ホーム10年、介護老人保健施設10年というキャリアの持ち主で、同じ法人内の4つの施設に関わり、立ち上げや、現場指導を20年行ってきたそうです。
ところが新規に開設する施設に「監視カメラを導入したい」という経営代表と、「それで人員削減されたら介護はできない」と反対する髙口さんの主張がぶつかり、いきなり解雇という形になったそうです。経営側は「監視カメラの導入はこれからの介護を乗り越えていく国の方針であり、経営の方針でもある。これを理解できないものはいらない」と
これは単に良心的な介護指導者も経営の方針に合わなければクビになるという、髙口さんに起こった悲劇ではなく、介護保険の転換点だと上野さんは主張しています。経営は監視カメラ、ICT化、ロボットの導入などで生産性向上を図り、組織防衛をしていくのです。
上野さん曰く「兵法にいわく、戦略の間違いを戦術で補うことはできない。戦術の間違いを戦闘で補うことはできない」戦闘というのが髙口さん、あなたのいる現場。戦術を考えるのが介護事業者、戦略を練るのが政治です。
良い介護の実践という戦闘を長年してきて、気が付かなかったのでしょうかね。髙口さん。経営の間違いは確かに戦術では補えないのですね。とても残念な気がしました。やっぱり介護保険制度の問題でしょうか?
さて私たちはどんな老後を送りたいか、真剣に考えなければ. 老後ナウ
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